あばよ相棒・太陽投下軌道

直径数百メートルの廃棄資源衛星ごとガンダムを太陽にたたきおとす場合の軌道を考えます。今回は近似軌道連結法(patched conic approximation)という方法を使います(というか他知らない)この方法では、地球、太陽、惑星のどれかひとつの引力だけが働く影響圏というものを仮定して、その中でそれぞれの軌道を計算します。

廃棄衛星のブロックは、地球の公転軌道をゆっくりと内側に進んでいた。

真っすぐ太陽に向けて打ち出しても、地球が太陽の周りを移動する公転スピードは凄まじく速く、そういうコースになっていく。

廃棄する衛星に、わざわざ、地球や周囲の惑星の重力に邪魔されないような強力なバーニアを取りつける必要などないから、自然とこうなるわけだ。

隅澤克之著・『新機動戦記ガンダムW(ウイング)Endless Waltz』上巻P.178より

地球の影響圏

r = 惑星の平均軌道半径
m = 惑星の質量
ms = 太陽の質量 と置いた場合、
惑星の影響圏は以下の式で求まります。

影響圏半径 re = r(m/ms)2/5

地球だと大体0.9×106kmになります。

中間飛行フェーズ(地球影響圏外〜太陽落下まで)

とりあえずホーマン軌道として計算します。これで途中でスイングバイとか入ってたりしたら、すべての仮説が吹っ飛ぶんですが……。ま、そのときは計算しなおせば済む話です。
今回はちょっと賢くなったので、エクセルで計算しましたよー(あんまり使わないんで存在を忘れていました)

太陽の重力定数(GS)は1.32712438×1011km3/s2、よって太陽に宇宙機を投下するホーマン軌道は以下の通り。

近日点(高度0km)rp = 太陽赤道半径 = 696000km
遠日点(高度149597870km)ra = 地球公転軌道半径 = 149597870km
軌道長半径 a = 75146935km
軌道短半径 b = 10203927km
離心率 e = 0.99074

上記パラメータより、 近日点速度 Vp = SQRT(GS/rp)×SQRT(ra/a)= 616.11001km/s
遠日点速度 Va = SQRT(GS/ra)×SQRT(rp/a) = 2.86643km/s

半径raの円軌道速度 = 地球の公転速度 v1 = SQRT(GS/ra) = 29.78469km/s
であることから、遠日点から必要な速度増分儼aは、

a = v1 - va = -26.91826km/s

ちなみに所要時間はというと、軌道周期の半分を出せばいいので

tp→a = π×SQRT(a3/GS) = 5617731.351086sec = 65.02004

約65日で太陽に落下するということは、つまりカトルたちがガンダムを廃棄したのはクリスマスから起算して65日以内のことだった、ということになります。

出発フェーズ(地球影響圏内飛行)

地球周回軌道を出発し、影響圏の外縁で中間飛行フェーズのホーマン軌道に接続する軌道を考えます。この軌道は双曲線軌道となります。この双曲線軌道が地球の影響圏外縁と接するところで先ほど求めた出発速度(-26.91826km/s)を満たすのに必要な投入速度は、軌道高度をL4軌道(地球の中心から382,087km)とした場合、

地球重力定数 μE = 3.98650×105km3/s2
出発速度 v∞d = -26.91826km/s
とおいて、

投入速度 v0 = SQRT((2μE/r0) + v∞d2) = SQRT((2×398650/382087) + -26.918262) = 26.95699km/s

なお、L4の軌道速度は(軌道高度×2π)/月公転周期 = 1.017km/sなので、進行方向が地球の公転軌道と逆行しているときを利用すれば、ちょっと速度を稼げて
26.95699km/s - 1.017km/s = 25.93999km/s

廃棄衛星でそんな速度どうやって出すんだろう。外宇宙に捨てた方がまだ楽なんではないでしょうか(公転速度を利用できるため)。こう言っちゃなんですが、コロニー落とすよりはるかに大変なんでは……?

金星軌道まで50日

ちなみに、EW小説版/上巻P.178の記述によると、衛星はクリスマスの時点で『金星軌道に交差するまで50日の距離にある』とのことなので、これをもとにすれば投棄した大体の日付も割り出せるかもしれません。ざっくり計算してみた(行列自信ない…)ところ、地球を離れてから約41日の時点で金星軌道を通過するようなので、劇中の設定とは矛盾を起こしそうです。軌道投入から50日経ったら金星軌道より内側に行ってしまってるので。

あっもしや、本当にスイングバイか!?

(初出 : Weblog 2004/08/23 / 加筆修正 : 2004/12/19)